カテゴリー:
タグ:

『アメリカ女性刑務所での体験』②~ココロのかたち~

2014-02-14
テーマ:マリコ体験談

※こちらの記事は、
2014年2月14日に投稿した記事の
再アップとなります。

皆さん、こんにちは!
美流-BIRYU-開発者の安藤万里子です。

2003年、私が所属していた
ダンスカンパニーで決行した
1年間の全米ツアーにて
ダンサー/講師の一人として体験した、

アメリカのとある女性刑務所での
忘れられない5日間を
皆さんのココロに伝わるよう一生懸命綴ります。

私のココロに一生消えることのない
強い光を灯してくれた、
愛するインメイツ(受刑者の方々)にも

この想いが届きますように…

☆゜・。・゜゜・。・゜゜・。・゜゜・。・゜☆

アメリカの女性刑務所を回り
各地に1週間ほど滞在し、施設内の一室にて
5日間のダンスワークショップを行い、

最終日にスタッフや他のインメイツが見守る中で
受講者の発表会&ミニコンサート。

基本的に、私たちは1年間
このスケジュールで過ごしました。

毎朝この施設を訪れ、
水さえも持ち込めない
厳重なセキュリティーを通って所内に入ります。

部屋ごしにたくさんの警備員に見守られ
複雑な作りのドアを何度も通り抜け、

その中に広がっている雰囲気は
不思議とそれぞれの刑務所で全然違いました。

危機感、
虚無感、
絶望感。

それらの入り混じったもの。

身体で感じるから、
ことばにできない感覚もたくさんあります。

表に出ている看板は同じです。

しかし、
そこが刑務所なのか
はたまた更生施設であるのかは
所長とスタッフを見ればすぐにわかります。

そう、
場所によっては暖かい雰囲気も感じられるんです。

そこには必ず
温かく献身的なスタッフと、

ひとりの人間として扱われ
辛いものを抱えながらも強く生きる、
前向きなインメイツの姿がありました。

そう考えると
インメイツだけでなく、
所長やスタッフの方たちにも

身体で表現し、
人に関わることのすばらしさを
このワークショップを通して感じてもらえたら…

そんなことも感じていました。

そんな中、ある州の女性刑務所での
ワークショップが始まりました。

初日はとにかく身体を動かしたいだろう若者から、
楽しくダンスをしたい中高年の方まで
様々な年齢層の方が集まっていました。

ちなみにその人がどんな罪を犯したのかは
プライバシーの侵害となるので
知ることができません。
(知る必要もないですが)

とはいえ便宜上、
他の刑務所と同じように

◎刑の重い人
◎刑の軽い人
◎ドラッグ常習者

によって着ているTシャツの色が分けられています。

希望者参加型のワークショップなので、
普段は別々の棟で生活しているインメイツが
入り混じっていました。

私たちは彼女達にストレッチから指導し、
簡単なダンスのステップを教えました。

その後「表現」をテーマにいくつかのワークをし、
インメイツたちと一緒に
作品を創り上げていきます。

インメイツ達の中には
効き目の強い抗うつ剤や精神安定剤を
常用している人が多いため、
集中するのが大変なようでした。

みんな子供のように
いや、それ以上に素直で

面白ければ喜んで挑戦し、
つまらなければ部屋のはじに座り込んだり

もしくは部屋から出て行きました。

私たちはみんなに
『ただ身体を動かして楽しい』
というレベルではなく、

身体でおもいっきり何かを表現して
それが相手に伝わることで得られる

とてつもない「感動」を
体験してもらいたい一心で、

最初のストレッチから
それはそれは必死に教えました。

私たちがそこまで熱くなったきっかけは、

全員で輪を作り、
中心にひとり立ってもらい、
一人ずつ中心の人に歩み寄って

その人の「良いところ」と
そこから湧き出てきた感情を

動きを使って相手に伝える

そんなワークを通して
とても大切なことを学んだからです。

私たちも含めて、

初めて会った相手の「良いところ」

を言葉でなく身体で伝えるのは
とても難しいことでした。

初日は
皆に見られている恥ずかしさもあってか

笑いながらただヒップホップを踊っている
若い女の子もいれば、
伝え方がわからなくて
完全にジェスチャークイズみたいになっている
女性もいました。

私たちも、
人より身体は動かせても
その人の良いところをちゃんと相手に伝えられない

自己満足の動きばかりをしていたことに
初めて気付かされました。

全員が目の前で表現し終わっても
真ん中の人はきょとんとしていました。

私は勇気を出して
真ん中に立ってくれた彼女に対して、
申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

皆同じ気持ちだったのでしょう。

2日目、3日目と続けていくうちに
みんなの目が本気になっていきました。

クラスを通して相手を知っていくにつれ、
表現の仕方が変わっていきました。

胸の前でハートマークをつくって
相手に差し出したり、
ぎゅっとハグしたり、

伝えようとする気持ちが
だんだんと強くなって
それぞれの表情も変わっていきました。

伝える側の手や身体に宿る意思が
徐々にはっきりしていくのを見て、

「表現」とはこういうことだと
胸が熱くなったのを今でも覚えています。

真ん中に立った人は嬉しそうに、
笑顔で
「ありがとう」
と言っていました。

そのありがとうはとても心に響きました。

そして、
もっともっと伝えたいという気持ちが
みんなの中で高まっていきました。

迎えた最終日。

このクラスが終わったら、
もう次の日は会えません。

おそらく一生会うことはかなわないでしょう。

想いを伝えるなら
今、この瞬間しかないのだと噛みしめながら
最後のワークを行いました。

この日真ん中に立ちたい、と手を挙げたのは
最年長の方でした。

挙動不審で落ち着きがなく、
精神が不安定だということは
誰の目から見ても明らかでしたが、

5日間を通して、彼女
チャレンジ精神旺盛で、素直で、笑顔がステキで、
思いやりのある優しい方だと知りました。

こころに大きな闇を抱えて
現実とそうでない世界を行き来している彼女の心に
伝えたい気持ちがたくさんありました。

伝わりにくい相手だからこそ、
みんな必死になっていました。

正直、それぞれが彼女の前で
どんな動きをしたかは覚えていません。

それよりインメイトの一人一人が
出会って5日目の彼女へ
ありったけの愛を伝えようとする姿に
不自然さやわざとらしさは全くなく、

本当に、ほんとうに美しくて

自然と涙がこみ上げてきました。

中心にいた彼女は
じっと立ったまま、
とめどなく涙を流していました。

全員が彼女の前に立ち、表現した後、

彼女は震えた声で

「私は人を殺してここに何十年も入っています。
私には、外の世界にただひとり残してしまった
息子がいるんです。

一生叶わない夢だと諦めていましたが、
私はここを出て、彼に逢いに行きたい!

彼に会って、
長い間伝えられなかった彼への愛をちゃんと伝えて
こんな幸せな気持ちにさせてあげたい
と心から感じました。

生きていてよかった。
愛をくれてありがとう、ありがとう」

と、澄んだ目で私たちに伝えてくれました。

そこにいたのは、
それまでの無邪気で子供のような彼女ではなく
子供を愛する、ひとりの母親でした。

最後に、このワークショップの感想を
一人ずつ発表しました。

ある女性は、
「私は今まで
愛情を表現することができませんでした。
家族にさえ、
愛していると伝えることができませんでした。

だから、今すぐ家に戻って、
こどもたちを強く抱きしめて
愛しているよって伝えたい!

あなた達が、私の人生を変えてくれました。
本当にありがとう…」

また、ある方は
「この施設を出たら、
絶対にダンスを習います!

あなた方のように
表現豊かな人間になりたいから。

今からそれを楽しみに、
前向きに生きていきたいと思います。」

全員が号泣しながら、
「自分の人生が変わった」と
心から伝えてくれました。

私もそのひとりでした。

正直言って
ツアーに入る前のリハーサルの段階では、

「プロの本気の踊りを見せる」
「身体で表現することの楽しさを教える」
私たちはこの程度の意識しかありませんでした。

依頼者も受刑者への情操教育として、
身体を動かして気持ちを開放させる目的で
私たちを雇ったのだと思います。

ただ、ディレクターが求めていたのは
もっと深いものでした。

実は彼女は
『ダンスセラピスト』
として長年活動していたのです。

私たちダンサーは
ラッキーなことに彼女に選ばれ、

最高の環境で、知らない間に1年も
ダンスセラピストとしての訓練を
受けていたわけです。

ツアーが始まってからは、

「つまらなかったらいつでも受講をやめられる」
というスタンスの
ごまかしのきかない相手を前にして、

毎日が真剣勝負でした。

私たちも悩んで話し合って試行錯誤して、
どうしたら一人一人に気持ちが伝わるのか
超必死になって取り組みました。

最初の数日は
それぞれのインメイトが
他の参加者に対して、
そして私たちに対して、
警戒心を持っていました。

人は信用できない。
深くかかわるのはやめよう。

そんなインメイツたちも
この深くかかわっていくワークの中で

日を追うごとに
少しずつ心を開いてくれました。

きっと思い出すのも辛いだろう、
自分の犯罪履歴や
その時の状況を
自ら語ってくれました。

こうした彼女らの変化を
目の当たりにすることで

「人と真剣に向き合うこと」
の大切さ、素晴らしさを知り、

また
人に表現の素晴らしさを教えるつもりで
この仕事を受けたはずが、

気が付いたら彼女たちを通して
「思いを伝えること」
の実際を教えられていました。

ダンスを踊ることは自己満足なのではないか?
本当に誰かの役に立っているのだろうか?

プロになってからも
この疑問に悩み続けていた私は、

少年少女院での経験や
彼女達の
『ありがとう』
という言葉に心底救われました。

どんなに絶望に溢れた場所でも
人が人に関わろうとする強い気持ちがあれば

こころからの笑顔と、
生きる勇気を与えるような
温かくエネルギーに満ちた雰囲気が
たくさんの「人」から生まれるんです。

私はそのココロのカタチを
一生かけて伝えていきたい。

私にとってはかけがえのない1年間でした。

ただそこにいる人たちを見ているだけであれば
わからなかったであろう、
一人一人のドラマに触れることができたから。

別れは辛いものですが、

彼女達とはずっと心で繋がっている
そう感じるから

彼女達を思い出すだけで
身体がこう伝えようとするんです。

ありがとう。

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆

余談ですが、

ワークショップの合間には
刑務所の実態をありのまま伝えようと
スタッフの方たちが
施設を案内してくださいました。

ドラッグ棟、重刑者棟、軽犯罪者棟をすべて回り、
それぞれのスケジュール、規則等も
簡単に説明してくださいました。

実際に住んでいるインメイトの部屋を
見せてもらったりもしました。

棟ごとに雰囲気も設備も全く違いましたが、
私の想像とは違い、質素ながらも
皆人並みに暮らしていました。

独房では、見学している私たちを見て

インメイツが檻に張り付きながら
私たちに暴言を吐きまくっていました。

医務室では、
心身喪失状態の患者が
自殺できないように工夫された
真っ白な部屋にも案内されました。

よく考えてみると、
日本人でアメリカの刑務所の内情を
ここまで知っているのは
私とあと数人くらいかもしれませんね…。

…ということで話は尽きないのですが、
これからも皆さんにBLOGを通して
アツく語っていけたらと思います。

〈アンドウマリコ〉