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『アメリカ女性刑務所での体験』①~コミュニケーションのかたち~


テーマ:マリコ体験談

※こちらの記事は、
2012年10月31日に投稿した記事の
再アップとなります。

皆さん、こんにちは!
美流-BIRYU-開発者の安藤万里子です。
このブログで語りたいテーマは
無限大にあるのですが、

今回は、
私の人生のターニングポイントにもなった
アメリカの少年少女院と、女性刑務所での経験を
皆さんとシェアしたいと思います。

…ビックリしましたか?

ちょっとだけドキドキしながら
読んでみてください。

○o。+..:○o。+..:○o。+..:*

数年前、私がニューヨークにいた時のお話です。

私の所属していたダンスカンパニーが
依頼を受け、
数名の選抜チーム(女性のみ)で
1年かけて全米の少年少女院、
主に女性刑務所を回り
公演&ワークショップ(ダンスの講習会)をする
ということになったのです。

私もそのメンバーの中に入っていました。

「決して簡単なプロジェクトじゃないから、
参加したくない人はしなくていい」
と芸術監督は言っていたのですが、

ド根性と情熱と好奇心で生きている私にとっては
願ってもない素晴らしいチャンスだと思い、
喜んで参加することにしました。

おかげで、一生知ることもなかっただろう
刑務所のシステムや現状も
知ることができました。

アメリカの刑務所には
国や州が運営する連邦刑務所と
企業が運営する民間刑務所があるんです。

刑務所を民営化しちゃうなんて
びっくりですよね。

そのシステムも影響してか、刑務所によって
スタッフの雰囲気、建物全体の雰囲気が
全然違いました。

とても献身的でアットホームな
スタッフや所長に囲まれ、
心のリハビリのしやすい
暖かな雰囲気の刑務所もありましたし、

「気を抜くと後ろからナイフで刺されるから、
誰にも気を許すな」
と教えられ、所内自殺者の絶えない
(私達がいた間にも、ありました)

暗く殺伐とした雰囲気の刑務所もありました。

その中で、私たちが訪れた
ある州の少年少女院は…悲惨でした。

入る前から嫌な雰囲気。

建物に入ってすぐに鳥肌がたちました。

無表情のスタッフの後について
セキュリティーを何度もくぐりぬけ、
誰もいない廊下を延々と歩いている間も、
私達は終始無言でした。

吐きそうでした。

それだけ、恐ろしいほどの「死」や「絶望」の
雰囲気が漂っていたからです。

ワークショップの会場に向かう途中、
ガラス越しに
子供達が座っているのが見えました。
子供達が私たちに気付いて
ゆっくりとこちらを振り向きました。

胸の奥がむぎゅっと締め付けられました。

涙がこぼれそうでした。

「死んだような顔」というのは
こういう顔のことを言うのだな、と。

生きているのが辛い、という顔です。
そんな顔が、そのガラス張りの部屋に
あふれていました。

足を止めることもできず、

一瞬、でもおそらく
一生忘れることのないショッキングな映像が
頭に焼き付いたまま、

私達は広い体育館に到着しました。

そこにいたのは、14~18歳くらいの
思春期の女の子40名ほどでした。
明らかに「無理やり参加させられた」
という顔をしていました。

スタッフから、
その子たちの半分以上は妊婦(もしくは母親)
だと伝えられました。

予想通りでしたが、ワークショップが始まっても
ずっと野次が飛んでいました。

ディレクターがダンスの歴史を簡単に説明し、
私達ダンサーがデモンストレーションで
軽く動きを見せるのですが、

「なにそれ、意味わかんない」
「ばっかじゃないの~」
「わーそれマジ変なんですけど」

と言っては私達のしていることをひたすら
からかい、あざ笑っていました。

リーダー格の女の子が目配せして、
「興味があるそぶりをみせるな」

と若い仲間を常に威圧していました。

彼女達は今までずっとこうしてきたのでしょう。

すべてをバカにして、聞き入れない。
絶対心を開かない。

学級崩壊のクラス並に
手のつけられない状態です。
そんな態度に
さすがの芸術監督も顔を歪めました。

でも、これが私達に火をつけたんです

言葉で通じないのなら、
『絶対に、踊りで何かを伝えたい』

言葉を交わさなくても、
私達メンバー全員がそう感じていたのが
伝わってきました。

「なら、こっちも死ぬ気で身体を使ってやろう」

衣装も照明も舞台装置もないところで、
ミュージシャン1人とダンサー4人で
30分の作品を上演しました。

「さぁこれからカンパニーの方々が
作品を上演してくださいます。」
と、スタッフさんが呼びかけても
ものすごい喧騒と罵声は
止まることはなかったのですが、

なんと
最初の5分で

ピタッ
とやんだのです。

そこから25分。

私達でさえ息を呑むような雰囲気で、
彼女達は私達の踊りを
食い入るように見ていました。

私は、
この熱い気持ちが伝わってくれ!と

その子たちひとりひとりの肩を
がしっとつかんで
ぎゅーっとハグする気持ちで
踊っていました。

身体の神経一つ一つが、
ものすごい勢いで身体を動かしていました。

あんなに強い気持ちで踊ったのは、
人生で初めてでした。

誰かのために。

伝えるために。

ダンスは
舞台芸術である前に
コミュニケーションでなくてはいけないと、

踊りは
目的でなく
何かを伝える手段でなくてはいけないと、

彼女達に教えられました。

作品が終わった後、リーダ格の子が、
そして彼女に威圧されていた子供達が、

割れんばかりの拍手をしてくれました。

正直、奇跡だと思いました。

あの雰囲気の、あの建物の中で、
こんなに興奮した空気を感じるなんて。

そして、公演後のアフタートークで、
子供達は沢山の質問をしてくれました。

「どれくらいダンスをやっているの?」
「貴方達が見せてくれたダンスは、
どこで習えるの?」

一番最後にリーダー格の子が、

「私もここを出たら、ダンスを習いたい。」
「すごいエネルギーを感じたよ。ありがとう。」

と、キラキラした目で言ってくれました。

人は、きっかけがあれば
短い時間でこんなにも変われるんだ
言葉がなくても、強い気持ちがあれば
人はつながれるんだ

ひょうげんのかたちは、なんだっていいんだ

そのとてつもなく大きな体育館から出るとき、
ひとりひとりにありがとうを言って回りました。

規則か法律かは分かりませんが、
彼女達には触れることが許されないんです。

でも、その肌のもっと内側にある心に、
ダイレクトに触れられた気がしました。

あの子達に、いつかまた会えたらいいな。

そのときまでに、もっともっと気持ちのこもった
ありがとうを伝えられる人間になりたい。

いや、なってみせます。

○o。+..:○o。+..:○o。+..:*

人間は、みな人と深く関わりたいんです。
本気で関わると、相手を、そして
自分自身を知ることができるからです。

実は、野次を飛ばすのも、
「関わること」に変わりありません。

あの子達も、あのすさんだ環境の中で、
必死に何かと関わろうとしていたんです。

感じ取ろうとすれば、
人の真意は伝わるものです。

でも、自分が本当に伝えたいことは、
死ぬ気で、本気で、
相手と向かい合う気持ちがないと伝わらない。

それを身をもって体験できた私は、
本当にラッキーな人間だと感じています。

もし皆さんにも、
この話を通して何かが伝わったのであれば…
私はとても幸せです。

次回は、ある州の女性刑務所での、
さらに感動の体験をお話したいと思います。
これは涙なしには語れません。

※もちろんこのお話は、私が身をもって
体験した、ノンフィクションです。